合併症-糖尿病と認知症- その3
高齢者糖尿病患者さんでは、全認知症のリスクが高まることが分かっています。
認知症で高頻度である、脳血管認知障害、アルツハイマー病ともに、糖尿病患者では、そうでない患者の2~4倍です。
認知症は、ほとんどが高齢者で発症するため、老年症候群の合併が多くなり、日常生活自立度や、認知機能、社会的背景につき評価する高齢者総合機能評価(CGA)を行い、コントロール目標の設定や、治療方針の決定を行うことになります。
認知症では、日常生活、社会生活で支障をきたすため、糖尿病療養も困難となります。
食事、運動などの生活管理、薬物管理などのセルフケアができず、介護者によるサポートが必要となります。
認知症までに至らない軽度認知機能低下の状態であっても、手段的ADLの自立困難となった場合には同様で、セルフケア行動が不十分による血糖コントロールの悪化、薬物療法では、飲み忘れのよる過少投与、服薬や注射をしたことを忘れてしまい、重ねて内服または注射する過量投与が起こる場合もあります。
認知症では、低血糖を起こしやすく、低血糖もまた認知機能低下をきたすため、特に注意が必要です。
次に、糖尿病で認知症のリスクが高まる発生のメカニズムは、動脈硬化を基盤とする脳血管障害、脳虚血、高血糖による酸化ストレス亢進や、終末糖化産物、インスリン抵抗性、高インスリン血症による脳内アミロイドβタンパクや、タウタンパクの代謝異常・蓄積などのアミロイド代謝の破綻などの影響により、脳の病理学的変化をきたし、認知症、認知機能障害が発症すると考えられています。
久山町研究では、糖負荷後2時間血糖値や、インスリン抵抗性の上昇が、アルツハイマー病に特徴的な病理学的所見である、老人斑の出現と有意に関連したことが報告されています。