クレンチング症候群~原因と症状~
みなさん、こんにちは。伊藤歯科医院カワニシです。
今日は「歯のくいしばり(クレンチング)」についてのお話です。
人間の口は、上下の唇が軽く閉じていて、上の歯と下の歯の間には少しすき間が空いているのが正常な状態です。
上の歯と下の歯を強くかみしめるのは食事の時だけで、その時間は多くても1日20分程度です。
しかし、成人の多くが無意識に歯ぎしりや歯をくいしばる癖を持っていると言われています。
この「無意識で歯を強くくいしばってしまう癖」のことを、専門的に「クレンチング症候群」と呼ばれています。
歯でぐっとくいしばっている時には、自分の体重と同じくらい、平均50~60キロ程度の力がかかっていると言われています。
主な原因はストレスです。
その他、スポーツ選手など瞬発的に力を入れるような職業の人はくいしばりが習慣化している場合があります。
また、歯並びや咬み合わせの異常、顎の変位、詰め物があっていないことなどが原因で、くいしばりが起きるケースもあります。
無意識にくいしばり続けて歯に強い力が加わることが常習化すると、以下のようなことが人体に起こってしまう可能性があります。
くいしばりが引き起こす症状
●歯の削れや欠損、亀裂、破折
特に、神経をとってしまった歯の場合、歯ぎしりの強い力に耐え切れず、歯の根っこの部分まで割れてしまうことがあります。
●歯の動揺
当たっている歯の本数が少なく、数本に集中している場合、その歯が力を強く受けぐらぐらしてくることがあります。
●歯周病
歯ぎしりによって過度な力が加わり、歯が揺さぶられると、歯周病菌による炎症がなくても、歯槽骨が少しずつ失われていきます。
また、歯周病菌による炎症も加わってしまうと、歯周病が悪化しやすくなってしまいます。
●知覚過敏
歯と歯茎の境目に部分に応力が集中し、歯の根元がくさび型に欠けた状態(くさび型欠損)になります。
エナメル質が破壊されてるため、象牙質が剥き出しになり、しみやすく、またむし歯にもなりやすくなります。
●顎関節症
強い力が常に顎にかかるため顎関節症を招くことがあります。
●骨隆起
顎の骨に過度に力が集中して、口の中にこぶ状の骨隆起ができることがあります。
その他、頭痛・肩こり・腕のしびれ・腰痛・倦怠感・難聴・耳鳴り・めまい・自律神経失調・冷え性・低体温・イライラするなどの全身の症状を引き起こす場合もあります。
次回はクレンチングの診断と治療、予防についてです。